wind’s book

物語の中の私が、才能を求めて愚かな一ページをめくるお話

レインコート

雨がゆっくり溶けていく。

あしもとで溶け切ったその“雨だったもの”は、誰かを掻っ攫って誰かが作った穴に落ちていく。

落ちてったその何かは、いつしか大きな流れに乗って行き、

選ばれたいくつかの何かは、雨になる準備をして、世界を湿らせながら上に登る。

その雨に触れると、冷たくなる。

冷たいのは、気持ちいいけど、

冷たすぎるのは、いやだ。

だから、「僕」は、傘を刺す。

目を瞑って、ゆっくりする。

「僕」にしかできない、レインコート。